泡沫の書き置き

文才のない学生がTwitterの延長感覚で書くやつです。そゆこと。

忘れたくないこと

 Aqoursの9人が、ステージ上段から沈んで見えなくなった。昨日と同じように、ライブが終わったのだ。隣や前の二人組は規制退場に引っ掛かりたくないのか、そそくさと会場を後にしている。

 

あとは、椅子に座って退場の順番を待つだけだった。昨日と同じ。

 

しかし、それは椅子に座って一息ついたときであった。

 

 

 

 

「「「Aqours!」」」

 

 

 

叫ぶ大きな声が聞こえたのだ。正面から見て右、完全見切れ席のあたりからだったろうか...?

反射的に、自分も叫んだ。舞台裏のAqoursの9人にぼくの声が届くように。この感謝の気持ちが伝わるように。みんな、多分同じ気持ちだっただろう。

 

そして、会場がひとつになった。

 

「「「AqoursAqoursAqours!」」」

 

これは、工程表に書かれたアンコールではない。でも、だからこそ、ドームにAqoursを見に来た6万人みんなが、声をそろえていたんだろう。

そうしなければ、僕らの思いは伝わらなかったから。

そうしなければ、Aqoursはステージに戻ってこれないから。

 

6万人のAqoursコールが揃うなんて誰が想像しただろうか?

この広い会場では、アンコールをひとつに揃えることが不可能に近いことだというのは想像に難くない。事実、Day1とDay2のファーストアンコールはそれにはほど遠かったのだ。でも、それは当たり前のこと、自然なことだ。ぼくも最初から諦めていた。

 

だから、この真に自然発生的なアンコールが一つに纏まるなんて、、、ありえないはずなんだ

 

でも、それは僕の目の前で起こった。そして自分もまた、この大きな渦の一部だった。それだけで、もう奇跡だといっても文句は言われないくらいだ。

 

 

そして、Aqoursはステージにまた戻ってきてくれた!

Aqoursのみんなが目に涙を浮かべているのを見たとき、ぼくは自分の、そして観客の『ありがとう』という思いが彼女たちに伝わっているのだと確信した。そうわかると嬉しくて、ぼくも涙が止まらなかった。

 

正直そのあとに彼女たちがどういうことを話していたのか、具体的な記憶が薄れていて思い出せない...

ただ何度も「ありがとう」と叫んで、それでもまだ足りなくて、Aqoursの誰かがいちどありがとうを言うたびに三度くらいありがとうを返していたような気がする。でも全然足りてない。

 

 

ひとしきり感謝を伝え合ったあと、伊波さんが「直接皆さんにありがとうを伝えたいと思います!」と言ったのを皮切りに、Aqoursの9人が次々と耳についたイヤモニ兼マイクを外していった。

 

なんて無謀なことをするのだろう!

東京ドームは、テーマパークや公園の大きさの指標になるくらい大きな会場だ。国内にあるドームのうちでは最も大きいものではないだろうか。そう簡単に、アイドルがライブをやれる場所じゃない。

ステージから二階席までの距離は、300くらいあるんじゃないだろうか。ゆうに音が1秒近く遅れてくる距離である。

そこで、9人が叫ぶ。

 

この一瞬、東京ドームは静寂に包まれた。

 

いや、この出来事は、本当に、ありえない。いや、ありえなかった。

曲が流れていれば、ドームを6万人の大歓声という爆音で満たすことは、何も音を立てないことに比べれば遥かに容易い。だって6万人もいるんだもの。

逆に言えば、6万人もいるがゆえに、全員が音をたてないことは不可能に近かった。

後ろのオタクは隙あらば連番者と大声で会話してたし、静かになればなるほど騒いで目立ちたがる厄介者もどこかにいそうだし。

 

でも、でもでも、この瞬間だけは、音が消えていた。

 

本日は!ほんっとうに!ありがとうございました!!!

ありがとうございました!!!

 

 

この声が、靄のかかった残響のような肉声が聴こえたときのぼくの気持ちを、何と形容したらいいのかな。

今日まで生きてきた自分をゼンリョクで褒めてあげたくなるような。

大好きな彼女たちの、マイクを通さないそのままの声は。たとえ輪郭を失っていても、明確な感謝の想いとして、ぼくの心に響いたよ。